来年の本格稼働に向けて『パッシブハウス型農業システム』の試験を行っています。
このシステム、何ができるかというと、夏の暑い時期にホウレンソウを始めとする
冬野菜が作れるようにビニールハウス内の環境を自動で制御できる代物です。
では植物工場かというと、さにあらず。
パッシブはアクティブの反意語で、「受動的」というような意味があります。
植物工場と違って「土」に植えて、「日光」で作物を育てます。
環境の制御は、遮光カーテン、ファン、ミスト散布で行います(全て自動です)。
一般に、ホウレンソウは日中の最高気温が30℃を超えるような時期には
枯れてしまって育てることができません。
宮崎県では9月20日頃から30℃を下回ってきて播種が可能になります。
年によっては10月にならないと枯れてしまうこともあります。
今年もこの暑さでは10月にならないと播種できないでしょう。
気象条件が年々悪化する中、野菜生産の現場に環境制御が求められていますが、
パッシブハウスの良い所は、地球環境への負荷が少ない点です。
LED照明やエアコンを使わず、前述の遮光カーテン、ファン、ミストという
簡単な装置で制御を行っています。
これらの装置単体では、ハウス内に及ぼす効果は少ないのですが、
パナソニックのプログラムにより高度に組み合わせれて動作しているため、
ホウレンソウがちゃんと育ちます。
まるでリオ五輪の男子400mリレーの日本チームのようです。
このシステムだと電気代が少なくて済みますし、
1作毎に他の場所から土や培土のような資材を持ってくることもありません。
ホウレンソウ1束を作るのに、燃やす化石燃料が少なくて済むのです。
ただし、土の特性を悪化させないように最新の注意を払う必要があります。
特に化学性においては、リン酸、カリウムの値が1作毎に多くなり
チッソとの拮抗作用が起こり始めます。
風土はカルシウムの施用もしっかり行うので、さらに拮抗作用が起こります。
土は取り変えられない重要な資産ですので、慎重に管理します。
耕作者にある程度の技術が求められるため、「誰でも作れるシステム」ではありません。
8月5日に播種したホウレンソウの様子です(8月16日撮影)。
連日35℃を超える気温の中、見事に発芽しています。
遮光されている上に、ミスト散布により水分が多い状態に置かれているため、
しばらくは軟弱な状態が続きます。
この真夏の試験を経て、メーカーにアップデートを依頼し、
来年の本格稼働に繋げていきます。
乞うご期待。