株式会社 風土のスタッフブログです。
風土スタッフの日々や、野菜に関する記事を記録していきます。
宮城県で、渡辺採種場さん主催の「かぼちゃ研究会」が開催されたので出張して参加してきました。
正直なところ、時間的にもコスト的にも大きな投資だなと思いましたが、
現在の日本中のかぼちゃの大まかな現状を把握したかったのと、自社の方向性やレベルを
確認したかったこと、また栽培技術の向上のため思い切って参加しました。
参加者は約80名で、生産者、流通、種苗店、さらにエンドユーザーとして食のコンサルタントの方と、
かぼちゃだけという切り口にしては、様々な分野から人が集まり、とても有意義な会となりました。
なお、小売店として某大手スーパーの方も予定されていましたが、事情があってご参加されず、
それについては大変残念でした。
まず、開始前に渡辺採種場の試験農場で栽培されたいろんな品種のかぼちゃ(メーカーも様々)を
見せてもらいました。こうしてみると、色、形、大きさなど品種によって様々です。
風土は見た目も味もこだわりたいので、こうして「同じ場所で栽培された多品種」を
見比べられるのはありがたかったです。
かぼちゃの一部が黄色くなっているのは地面と接していた部分で、日光が当たらないために
色が乗らずにこうなりました。
均一に色を乗せるには、それ用のトレイを敷いてあげる必要があります。
これは、かぼちゃでなくても、スイカ等でも同様の一手間です。
次は座学です。
販売部長の佐藤さんの、理論とデータに裏付けされた熱弁に参加者は聞き入っていました。
具体的には、着果してから熟して収穫して出荷するまでの、かぼちゃに含まれる水分と
糖度(正確には屈折濃度)の推移の解説が中心でした。
もちろん、天候など様々な条件も加味する必要がありますが、少しでも早く収穫してしまった時に起こる、
品質や貯蔵性の低下を理解できたことは大変意義がありました。
また、かぼちゃは着果後8日目くらいに落果してしまうことがあるのですが、
この現象についての一応の仮説と対処方法を確認できました。
しかし、落果が確定してから実際に落果するまで、どのくらいの時間なんだろうとか
今頃になって新たな疑問がふつふつと・・・。
座学の後は試食です。
産地別、品種別、糖度別のかぼちゃを食べ比べます。
糖度が13度を超えてくると、口にした瞬間に「甘っ!」という軽い衝撃を感じます。
かつて1回だけ、収穫時の糖度が16度、風乾後21度というとんでもなく甘いかぼちゃが採れたそうです。
風土もそんな幻のかぼちゃを作りたいものですが、自然の恵みによるものも大きいので
その時が来るまでに技術などの準備は済ませておきたいものです。
昼食の後は座談会です。
生産者、流通、種苗店、エンドユーザーと、それぞれの立場から意見をぶつけていきます。
興味深かった点は、「どこまでこだわるべきなのか」ということです。
当然のことながら、こだわればこだわるほど労力(コスト)がかかります。
かかるコストはかぼちゃの販売価格に乗せるしかないのですが、多くの野菜は市況(相場)により
価格が変動します。市況が下がっても耐えられるだけ、低コストで栽培しておくことが重要です。
しかし、美味しいかぼちゃを作るにはそれだけの労力がかかりますので、どこかで妥協しないといけません。
妥協というと言葉が悪いですね。
どこを品質の下限とするか、その下限をクリアするのにどのくらいの労力がかかるのか、
台風や病害虫の大発生といった、突発的な悪条件に耐えられるのか、といった試算が必要ですね。
この試算はある程度PCや電卓でも行いますが、可視化できない要素が多い産業なので
感覚の精度を上げて「するどい勘」も身につけていかなくてはならないでしょう。
今現在、本当のこだわりのかぼちゃを生産している産地はほとんど無いのではないかと思います。
野菜の値段が安いからです。
いかに労力をかけずに良いものを作るか、というテーマはこれからの農業で最も重要なものになってくるかと思います。
もう1点興味深かった点が、糖度に対する考え方です。
甘ければ甘いほど良いのか、例えば用途によっては甘くなくても良い、ホクホクじゃなくて
ネットリとした食感が良いこともあるのではないかという意見です。
全くその通りだと思います。
一般にかぼちゃの用途は関西位西では「煮て」食べるので粘質系(ネットリ)、
関西位東では「蒸かして」食べるので紛質系(ホクホク)が良いといわれます。
しかし、これはあくまで定説で、究極は個人の好みだと思います。
お母さんはホクホクが好きだけど、お父さんはネットリが好き、というようなことですね。
ここで重要なのは、生産者が自分の作ったかぼちゃをホクホクなのか、ネットリなのかということを
区別して出荷できるのかということです。
極端な話、品種とか大きさよりも、ホクホクなのか、ネットリなのかが明確なことが
消費者には重要なのではないかと思うのです。
これについては、来期から本気で取り組んでいきたいと思います。
しかし、風土はあくまで完熟してホクホクしたかぼちゃにこだわりたいという思いは強いです。
目標とするレベルはできるだけ高い所に置いておきたいという意味もあります。
とても有意義な内容で、得るものが多い出張でした。
いつかまた宮城に来るときには、風土のかぼちゃは日本一だね(日本一だっぺ)と
言われるようになっていたいものです。
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1975年10月6日、東京都生まれ高知県育ち。普通科高校~大学法学部からIT関連のセールスを経て2008年10月1日に農業生産法人である株式会社風土を設立。